ユニクロ株価最高値@ジーンズ業界論概説

東証一部、(株)ファーストリテイリングが年初来高値更新している。株価54,000円(額面50円)。上場は1999年2月。これってユニクロなんだよね。詳しいスペックはHPがあるんで省くけど今や日本一のカジュアルショップだ。

日本のジーンズ業界ってのはちょっと変った構造を持っていた。ジーンズメーカーによる市場支配と、大規模専門店の地域独占構造という、「ジーンズ」という語感とはちょっと離れたある意味で衣料品業界の中でも古い商習慣を最も引きずった業界だった。ちなみに、現在東証一部に上場しているデニム比率の高いカジュアルショップはその他には(株)ジーンズメイトと(株)ライトオンがある。そして日本の有名ブランドで上場している会社はない。って珍しい業界だよね。今でもブランド物のジーンズって定価っつうか希望小売り価格通りに売られている場合が多い。これってその名残みたいなもんなんだな。

メーカーの成り立ちをざっと見ると、リーバイスは米国法人の子会社なんで別物としてEDWINの前身は常見米八商店って言う、中古衣料の元受け会社だった。アメ横とかの米軍払い下げ衣料店に卸す大本って感じかな。本社は大本教の東京本部の隣だったんだけど、って関係ないけど。

BIG−JHONとBOBSONは岡山っつうか倉敷の縫製メーカーが母体だ。つうか実は先代の社長は兄弟なんだなこれが。この2社は1980年代末にEDWINに売り上げトップを譲るまで、過激なシェア争いを行っていた。

この3社は今でも完全な同族企業で株は親戚縁者で持ち合っている。良い悪いは別にして巨大な中小企業って言っても過言ではない体質を持っている。

大手5社と言うと残りはラングラーなんだけど、これは三菱商事の系列に近い。

アメリカ人もびっくり、つうか日本は異常にジーンズの値段が高い。これはまぁブランド好きな人が多いって事もあるんだけど、この5社の独占に近いジーンズ業界支配、そしてそれによって潤っていた、小売り専門店との利益共同体としてカジュアル市場が機能していた面がある。興味のある方は大手メーカーの数字は非上場版の四季報に載ってるんで、見て驚いて欲しいな。銭返せって気分になると思うよ。ついでに経営者一族の所得も。

この構造に最初に挑戦したのが、ファーストリテイリングジーンズメイトだった。

ファーストリテイリング山口県の小郡ってとこで発祥したんで、最初は小郡商事って名前だった。若干後発でもあったんで、大手メーカーに苛められたっつうか、老舗と差別されていたりした。当時の山口県ジーンズ市場は「山口ジーンズ会」っていう老舗の親睦団体と、九州・関西では御馴染みの「三信衣料」そして中国・四国にチェーンを張るテキサス貿易の系列が住みわけていて、大手メーカーと持ちつ持たれつだった。ところが、偶然っつうかなんつうか宇部に本部を持つ大手、そして山口に本部を持つ中堅SHOPが放漫経営から相次いで倒産する。小郡を鋏んで、ジーンズの空白地帯が出現するんだよね。

すでに、一部自社ブランドや大手メーカー以外の商品を積極的に扱っていたファーストリテイリングは、大手メーカーからも有利な条件を引き出す事が出来て、一挙に走り出す。まだ消費者も今以上にブランド信仰が強い時代だったし。その過程で、希望小売価格を全国のショップで唯一崩すんだよね。でも風当たりめちゃ強。そして多店化を図る中で、一部大手ブランドと決別してユニクロブランドの確立に向う。これってその当時としては、画期的な戦略だった。

全国の大手ショップは、各メーカーの協賛を仰いでロードサイドショップを出店していた。でも、店名が違うだけで、どこにいってもメタルのエレクターラックが立っていて、商品も一緒、値段も一緒、バーゲン品まで一緒って店がやたら増えていった。バブル期はそれでもなんとかなったけど、ご存知の様に廃虚になっちゃったお店も多い。

そんな頃、関東ではジーンズメイトが都心の店で金券による実質的な値引き販売を開始する。メーカーは公正取引法ぎりぎりの手段でこの2社に圧力をかけるんだけど消費者だって馬鹿じゃないんで、この2社は急速に売り上げを伸ばす。そして、SPA型へと転換を図ってゆくんだよね。

ジーンズ生産のノウハウは「スキュー」と呼ばれる捩じれを加味した型紙と、デニム独自のサイズピッチによる「グレーディング」、頑丈さを維持する「巻縫い」の精度と自動化、そして「洗い」の4点が重要になる。以前はこれって大手メーカーの独占技術だったんだけど、某大手メーカーの最高技術責任者が社長と喧嘩して会社辞めて、全部公開しちゃったんだよね。って元々その人がノウハウ持ってたんだもん。

なので、今ではきちんとした作り込みをする会社なら、SPA型のショップブランドでも大手メーカーでも商品にほとんど差はない。洗い工場なんて元々国内なら、豊和さんか協和さんか第一洗工さんか第一ドライのどれかの系列しかないんだもん。ってEDWINだけはジーンズMCD(秋田)っての持ってるけど。海外に出すときはどこかのレセプト持って行くんだよね。

話しがそれちゃったけど、GAPの上陸もあってやっと日本のジーンズ市場も正常化してきた気がする。別に自由主義市場なんだから、原価いくらで作った物をいくらで売ろうと勝手なんだけど、閉鎖に近い市場で構造的に利益を分配するのは、本来公正取引きとは言えない。残念なのは、大手メーカーが圧力を掛けるのを止めたのは、市場のニーズに応えた訳ではなくて、大阪で2度連続「公取裁判」で敗訴してからだ。

そのきっかけとなったのは、西の「ユニクロ」、東の「ジーンズメイト」の戦略であり、両社は現在一部上場企業に成長している事はやっぱ興味深いと思う。良い商品が安く買えれば、それに越した事はないし。

なんか中途半端になっちゃったけど、お腹すいたんでまたね。じゃ!