そごう債務超過*百貨店の天国時代の終り

さて、本論なのであるが先日から債務超過が表面化して、動向が注目されていた「そごうグループ」が水島会長の退任、大胆な店舗の閉鎖、銀行への債権放棄要望を中心にした再建計画を発表した。バブル期の大型店出店と多店舗戦略が頓挫した結果なのであるが、ここにもう一つ忘れてはならない要素が見落とされている。

記憶にある方は少ないかも知れないが、昭和52年に当時の若者のファッションを代表するVANジャケットが倒産した。最初に指摘されたのは、社長だった石津謙介氏がデザイナーであるが故の放漫経営、そしてアイビーファッションの衰退等が取りざたされたわけであるが、精算が進む過程で恐るべき事実が露呈する。これは当時、三菱商事との合弁であり、息子の裕介氏がf代表を勤めていたラングラージャパンでも発見された。それは、百貨店との専用伝票の未帳合による巨額な請求と入金の差異金額である。

売店との業務経験がある方はご存知であろうが、百貨店統一伝票とチェーンストア統一伝票という物が存在する。昭和40年台までは、各社が独自の伝票を使用していたものが、40年台後半から汎用コンピュータの普及と共に、百貨店協会、チェーンストア協会の指導により、仕入れ伝票が統一されて行くのである。そして50年台に入ってからは、当時最新の技術であったOCR(光字読み取り)伝票が急速に普及するのである。

当然、各百貨店外商部が電算会社と納入業者との仲介を行って、荒稼ぎをした事は言うまでもない。それ以上に問題が起こったのは、各納入業者の社内伝票と専用伝票の二重伝票制が急速に一般化したのである。

つまり各社は社内財務会計はあくまで社内伝票を基準に行い、百貨店やチェーンストア、その他独自の伝票体系を持つ小売業とは専用伝票単位で決済を行う事となったのである。

何故それが問題なのか?

百貨店は、催事はじめ、売り場改装の協賛、社員販売、期末値引き等、各種の値引き伝票と相殺伝票を発行する。建前は営業マンとの合意であるが、バブル期までの右肩上りの売り上げ増の中では半ば強制というか、売り場単位での頭割であった。それに留まらず、盆暮れの外商の割り当て、宝飾や高価な着物等の割り当て等も各社に与えられていたのが実態である。それらの伝票は、決済時点では当然請求から除外されて支払われるのである。

その伝票が正規に処理されれば、まだ問題は少ない。処が往々にして、百貨店社員や営業マンの鞄や机で眠ったり、紛失したり、事務セクションで専用伝票勘定だけが処理されて、社内伝票が未処理となる。この差異の発見が困難と言うか遅れてしまうのは、各社ばらばらな〆日の問題と、返品の伝票発行日と処理日の差も加わって、ほとんど追求不能な状況が続出したのである。これは翻っては在庫の差異となり、適切な在庫処分を阻害したり、生産・販売の機会損失、そして物流の不祥事にも繋がるのである。

では、営業マンはどうしたのか?

営業マンの営業成績は社内伝票処理によって行われるのが一般的である。この為大量の返品や値引きを隠す傾向が出現する。俗に言う「伝票を捲いてしまう」のである。中小専門店に対しては、代金回収が厳密に行われ、それも営業成績に反映されるのであるが、チェーンや百貨店担当部門では、回収が出来る事が前提で、売り上げ優先となるのが一般的であった。売り場占有率が即、マーケットシェアに跳ね返る時代でもあったのである。

これが端的に現れたのが、VANジャケットのケースなのである。管財人もあきれたのだが年商実質300億強に対して、伝票差異による累積未入金金額は124億にものぼっていた。これが会社更生法適用に至らなかった、大きな要因にもなった。破産、会社清算である。

同様のケースは、現在は再建された「花咲」、やはり清算となった「アメリカンスタイル」、最近では「グラスメンズ」「アルファキュービック」にも見られる。

この金額は、すべてが小売り企業の利益になった訳ではない。在庫残高も絶望的に合っていなかったのだが、これは横流しや背任の噂も流れたが立件されてはいない。

この専用伝票差異が、全企業に渡って急速に解消されて行くのは、WIN95の登場と歩調を合わせるのである。膨大な手作業か、かなりの経費を投入してプログラムの投入を行わなければならなかったのが、アクセスの登場で照合作業が飛躍的に簡素化した。また、伝票自体を電送により、POSタグ連動で発行する事が一般化して、専用伝票基準で、社内伝票を発行するのが当たり前となる。もちろん汎用機の価格低下、PCの性能向上が後押しした事は言うまでもない。

景気が落ち込み、売り上げが不振となれば、納入業者もおいそれと、値引きや協賛に応じられるものではない。明言は避けるが、興味のある方は昨年度の百貨店協会の部門別売り上げ比率をご覧になる事をお薦めする。発表されている数字に対する作為が明白に読み取れるはずである。

そこから失われた、百貨店各社の利益は計測不可能とさえ言われていて、最もこの分野で悪評高かったのが、セゾングループとそごうである事は業界では異論が無い処であろう。そしてこの2社がもっとも現在業績に不安を抱えるのである。

大型小売業はやはり、景気のバロメーターではあるが、独占禁止法との相関も含め正確に分析評価する事が重要である。小売業は店舗を閉鎖すれば当たり前だがその日から収入は途絶える。そして、支払いが滞って最もダメージを受けるのは、銀行やデベロッパーではなくて、中小の納品業者なのである。小型店舗でも閉鎖すれば100億円以上の売り上げと、それを納入していた業者はその仕事を失っているのである。

そこんとこ、ちゃんとしてほしいよね、まったくもって

じゃまたね!

さて、本論なのであるが先日から債務超過が表面化して、動向が注目されていた「そごうグループ」が水島会長の退任、大胆な店舗の閉鎖、銀行への債権放棄要望を中心にした再建計画を発表した。バブル期の大型店出店と多店舗戦略が頓挫した結果なのであるが、ここにもう一つ忘れてはならない要素が見落とされている。

記憶にある方は少ないかも知れないが、昭和52年に当時の若者のファッションを代表するVANジャケットが倒産した。最初に指摘されたのは、社長だった石津謙介氏がデザイナーであるが故の放漫経営、そしてアイビーファッションの衰退等が取りざたされたわけであるが、精算が進む過程で恐るべき事実が露呈する。これは当時、三菱商事との合弁であり、息子の裕介氏がf代表を勤めていたラングラージャパンでも発見された。それは、百貨店との専用伝票の未帳合による巨額な請求と入金の差異金額である。

売店との業務経験がある方はご存知であろうが、百貨店統一伝票とチェーンストア統一伝票という物が存在する。昭和40年台までは、各社が独自の伝票を使用していたものが、40年台後半から汎用コンピュータの普及と共に、百貨店協会、チェーンストア協会の指導により、仕入れ伝票が統一されて行くのである。そして50年台に入ってからは、当時最新の技術であったOCR(光字読み取り)伝票が急速に普及するのである。

当然、各百貨店外商部が電算会社と納入業者との仲介を行って、荒稼ぎをした事は言うまでもない。それ以上に問題が起こったのは、各納入業者の社内伝票と専用伝票の二重伝票制が急速に一般化したのである。

つまり各社は社内財務会計はあくまで社内伝票を基準に行い、百貨店やチェーンストア、その他独自の伝票体系を持つ小売業とは専用伝票単位で決済を行う事となったのである。

何故それが問題なのか?

百貨店は、催事はじめ、売り場改装の協賛、社員販売、期末値引き等、各種の値引き伝票と相殺伝票を発行する。建前は営業マンとの合意であるが、バブル期までの右肩上りの売り上げ増の中では半ば強制というか、売り場単位での頭割であった。それに留まらず、盆暮れの外商の割り当て、宝飾や高価な着物等の割り当て等も各社に与えられていたのが実態である。それらの伝票は、決済時点では当然請求から除外されて支払われるのである。

その伝票が正規に処理されれば、まだ問題は少ない。処が往々にして、百貨店社員や営業マンの鞄や机で眠ったり、紛失したり、事務セクションで専用伝票勘定だけが処理されて、社内伝票が未処理となる。この差異の発見が困難と言うか遅れてしまうのは、各社ばらばらな〆日の問題と、返品の伝票発行日と処理日の差も加わって、ほとんど追求不能な状況が続出したのである。これは翻っては在庫の差異となり、適切な在庫処分を阻害したり、生産・販売の機会損失、そして物流の不祥事にも繋がるのである。

では、営業マンはどうしたのか?

営業マンの営業成績は社内伝票処理によって行われるのが一般的である。この為大量の返品や値引きを隠す傾向が出現する。俗に言う「伝票を捲いてしまう」のである。中小専門店に対しては、代金回収が厳密に行われ、それも営業成績に反映されるのであるが、チェーンや百貨店担当部門では、回収が出来る事が前提で、売り上げ優先となるのが一般的であった。売り場占有率が即、マーケットシェアに跳ね返る時代でもあったのである。

これが端的に現れたのが、VANジャケットのケースなのである。管財人もあきれたのだが年商実質300億強に対して、伝票差異による累積未入金金額は124億にものぼっていた。これが会社更生法適用に至らなかった、大きな要因にもなった。破産、会社清算である。

同様のケースは、現在は再建された「花咲」、やはり清算となった「アメリカンスタイル」、最近では「グラスメンズ」「アルファキュービック」にも見られる。

この金額は、すべてが小売り企業の利益になった訳ではない。在庫残高も絶望的に合っていなかったのだが、これは横流しや背任の噂も流れたが立件されてはいない。

この専用伝票差異が、全企業に渡って急速に解消されて行くのは、WIN95の登場と歩調を合わせるのである。膨大な手作業か、かなりの経費を投入してプログラムの投入を行わなければならなかったのが、アクセスの登場で照合作業が飛躍的に簡素化した。また、伝票自体を電送により、POSタグ連動で発行する事が一般化して、専用伝票基準で、社内伝票を発行するのが当たり前となる。もちろん汎用機の価格低下、PCの性能向上が後押しした事は言うまでもない。

景気が落ち込み、売り上げが不振となれば、納入業者もおいそれと、値引きや協賛に応じられるものではない。明言は避けるが、興味のある方は昨年度の百貨店協会の部門別売り上げ比率をご覧になる事をお薦めする。発表されている数字に対する作為が明白に読み取れるはずである。

そこから失われた、百貨店各社の利益は計測不可能とさえ言われていて、最もこの分野で悪評高かったのが、セゾングループとそごうである事は業界では異論が無い処であろう。そしてこの2社がもっとも現在業績に不安を抱えるのである。

大型小売業はやはり、景気のバロメーターではあるが、独占禁止法との相関も含め正確に分析評価する事が重要である。小売業は店舗を閉鎖すれば当たり前だがその日から収入は途絶える。そして、支払いが滞って最もダメージを受けるのは、銀行やデベロッパーではなくて、中小の納品業者なのである。小型店舗でも閉鎖すれば100億円以上の売り上げと、それを納入していた業者はその仕事を失っているのである。

そこんとこ、ちゃんとしてほしいよね、まったくもって

じゃまたね!