緊急経済対策って、何が緊急?誤解の根本。「米証券取引委員会基準」

うぎゃ。<=なに?

しかし、一部新聞を始めとして、TVやラジオのニュース無茶苦茶でんがな、まったく。個別の案件については、書きたい事もいっぱいあるんだけど、どうして間違いっていうか、誤報スレスレの内容が増えちゃうのかって言えば、やはり会計についての知識の不足じゃないのかな。

議員さんたちが、判っているとも思わないけど、一応スタッフや官僚様がチャック、もといチェックしているので、政策として出てくる時は、効果や施策としての整合性はともかく、形にはなっている。今回の一連の流れを見ていて、一番へんちくりんなのは「米証券取引委員会基準」への誤解かもしれない。この誤解に基づいて、あたかも銀行が長い事粉飾決算っていうか、信用情報を偽っていたようなニュアンスはどないなもんじゃろかと思うんだよね。もちろん、子会社含みで粉飾していた所は別もんだけど。

私も過去の銀行のオペレイションを了とするものではないけど、公開されていた決算は、証券取引法有価証券報告書の財務情報作成基準に従う訳で、問題になっている「不良債権」の会計上の処理は、大蔵省企業会計審議会「企業会計原則(最終改定1982年4月20日)」の、注解18 「引当金について」と題される、

「将来の特定の費用又は損失であって、その発生が当期以前の事象に起因し、発生の可能性が高く、かつ、その金額を合理的に見積ることが出来る場合には、当期の負担に属する金額を当期の費用又は損失として引当金に繰入れ、当該引当金の残高を貸借対照表の負債の部又は資産の部に記載するものとする。例示として、貸倒引当金を含む11項目を明示している。」

に準じていた訳だよね。また商法の規定も

商法第285条の四第二項「金銭債権につき取立て不能の恐れあるときは、取り立つること能はざる見込み額を控除することを要す」

だけなので1998年4月1日に税法が改正されるまでは、法人税法の規定によっていたわけだ。

ざっぱに言えば、日本の企業会計は税法に沿って行われていたわけで、本来は企業の業績及び財務状態を明確にする為に存在するものなのに、政策的に立法される事のある税法に準拠していたんじゃ、継続的な推移は把握できゃせんので、やっぱそりゃ別もんにすべぇって改正された訳だ。そして同年10月の金融再生法によって分類された不良債権の公表が義務付けられたんだけど、これは残念ながら企業としての金融業のディスクロジャーに全面的に繋がってはいない。まぁ、今回は引き当て金じゃなくて、直接処理しようって事なんだけど、それだけで問題が解決する訳じゃないってのは、ホントは当たり前すぎるって事だよね。

そんじゃ、「米証券取引委員会基準」なんだけど、この規定は会計基準を規定していなくて、前提として米証券取引委員会へ決算書を提出するには、米国会計基準に準拠しなければならない。余談だけど、東京三菱銀行が今まで海外から高い評価を受けて来た背景は、日本で唯一の米証券取引委員会登録銀行であったことに他ならないんだよね。細かな比較を継続的に行っているのはここだけだし。オリックスも去年からやってるけど、まだ完全ではないようだ。そもそも、米国会計基準には「経常利益」にあたる物自体がそもそもなかったりするしね。

ちょうどNHKで「会計ビックバン」って番組をやっているんだけど、金融の国際化を阻害している物に、この会計基準の世界的不統一がある。

ちょっと話しをひっぱると、前からなんどか書いている日本の特殊法人公益法人には、そもそも明確な適用される会計基準が存在していない。こりゃいったいどうなっちょるんじゃ?って、まずマスコミもこの辺を突っ込んでほしんだよね。野次馬みたいに、「不良債権処理」って書けば責任果たせる訳じゃないんだよ。ってそもそも、「金融再生」「経済対策」のはずが、本末転倒なんじゃないかい、まったく。

本来は、って言うか国家の舵取りをする人達が、将来を見据えてやっておかないといけない事だった。会計基準の国際化とか知的所有権登録とか、経済大国を自任するなら、その時点で手をつけておかなければならないんだよね。せめて、バブル経済が弾けた認識を持った時点で、税法や会計基準に根本的な改革を行うべきだったんだよね。

それは、先進的技術や国際競争力を持つ企業に負担をかけて、本来市場から退場すべき企業に手厚い保護を行う結果になってしまう。はうー。

出て来る情報を見る限り、「緊急」なはずが、ちっとも急いでいるように見えないのは、やっぱ総裁選挙と参議院選挙が優先だから?って仮に大敗しても、衆議院で逆転するわけじゃないもんね。

うーーん、なんか風邪っぽいんで今日はこれまで。ってことでまたね!