自民党支配構造の変遷*安倍晋太郎考察

小渕派どこに行くんだろう?しかし野中さん、すごい顔になって来てるなぁ。綿貫さんがまともに見えるよ。って政治家様で良い顔ってほんとに少ないよね。

自民党を考える時に、派閥領袖であり生きてさえいれば総裁・総理になれるはずだったのに、志半ばにして亡くなられてしまった安倍晋太郎さんを思い出す。言うまでもなく福田派を継承して田中派に次ぐ勢力を誇り、党三役、そして外務大臣から総理を狙う王道を歩いていながら病魔には勝てなかった人物だ。

安倍さんはおやじさんも代議士なのだが、若くして亡くなられたので地盤を引き継いだ訳ではない。その代り「昭和の妖怪」と言うか戦前に大臣を務め、公職追放を経て総理大臣に上り詰めた岸信介さんの娘婿なんだな。新聞記者から岸さんの後押しで代議士になったが、2期目に落選する。その頃同じ選挙区には現職の農林大臣の周藤英雄って人と元首相の田中義一さんのムスコがいたもんで、選挙は厳しい物があった。もう一回落選すると再起出来ないんだなこれが。岸さんってのは佐藤栄作元首相とは実の兄弟なんだが、決して仲は良くはない。ただ、いくらなんでも、元首相の娘婿が政治生命を失うのは忍びないってんで、次の選挙は協力する事になる。ここでウルトラCが行われるのだが、なんと周藤英雄さんの後援会長を引っこ抜いて安倍さんの後援会長にするんだなぁこれが。後援会長ってのは大日本水産会の理事にして日本水産物輸入協議会会長、って言うか大洋漁業の躍進のきっかけとなった、以西底引網漁の先駆者にして、鉄船トロール漁法をアメリカから日本に持ち込んだ人物だったりする。そしてその船団を中部一次朗、林兼産業(マルハ)会長へ売却したりした。そして岸&佐藤さんの出身地の幼馴染みだった。当然本人は強い難色を示したのだが、岸、佐藤、安倍の三人で自宅を訪問して一介の実業家の家の玄関で土下座するんだな、これが。殺し文句は「保守本流を守る為に筋を曲げて欲しい」
もちろん、後援会長さんもバリバリの自民党支持者だから、元首相2人からこう言われちゃ断る理由がない。ただそのままだと、自民党議席は増えないし、周藤さんの面目が立たないので、もういっぱつウルトラCがあって、名義上の周藤さんの後継者に元貴族院議員にして参議院議員山口県西部切っての名門の大蔵省勤務の息子を引っ張り出す。これが、後に数の理論で行われる総裁選挙に異議を唱えて出馬する、林佳郎代議士だったりする。これで、農林水産業界は安倍、鉄道交通土木は林、重工業は田中の住みわけができて、長州第二期保守王国が完成する。

しかし、この経緯が最後まで安倍さんには付き纏う。プライドを傷付けられたトラウマの様なものが残り、鷹揚かつ温厚な性格の中に、地元に対する屈折した感情が残ったようなのだ。これは、下関漁港の沖合い移転に非協力的であったり、水産加工団地設立の陳情を蹴ったりして、結局地元の核都市であった下関の衰微までもたらす確執となってしまう。この為、林佳郎代議士とは自民党公認候補の市長選でさえ最後まで同じ論壇に立たない様な異常な事態ともなる。

ちなみに、後援者や岸さんから将来を嘱望されていた安倍さんの長男は政界には入らず、まぁなにかとなにがあった次男が地盤を次いでいる。ちなみに地元筆頭秘書は後援会長の死と共にその公職をすべて引継ぎ、後援会長の子孫は会社を奪われて四散した事は、だれも口には出さないが、広く知られていたりする。

保守本流」っていったいなんじゃろ?言うまでもなく、佐藤派の流れは現在の小淵派に流れ、岸派は森派へと続く。勿論すべての政治家が感情に囚われているとは思わないが、リベラルで比較的政策通だと思われていた安倍さんにもこんな面があった。人間である以上好悪や感情があるのはいたしかたないのかも知れないが、私心を無くして国を考える政治家がどのくらいいるもんか、ちょっと心配でもある。っていらんお世話なのだが。

安倍さんが亡くなられた次のダイヤ改正で、新下関駅には「ひかり」は一本も止まらなくなった。

続くかも知れない。わかんないけど。

じゃ.