AIヒット記念@スティーブン・スピルバーグ監督を少しだけ好きなあ

最初にちょっと言い訳をすれば、私には映画を語れるだけの蓄積はない。好きではあるけど、見ている本数もたいした事はないし、どうも好みの傾向も鑑賞して残る様々な物も、どうやら片寄っているらしい。なので、スピルバーグ監督のファンの方からは、爆笑されるかも知れないなぁなんて思いながら今日の日記を書いている。

最初に見た作品はつきなみに「ET」なんだけど、その次には映写会で「世にも不思議なアメージングストーリー」を見た。この作品で私は、クリストファー・ロイドに出会い、ケビン・コスナーの異なった魅力に出遭い、そして「トワイライト・ゾーン/超次元の体験」を経てビデオで「激突!」を見て、「こりゃなんだか凄いんじゃないかい」なんて思ったりした。そして次に借りたビデオが「続・激突!カージャック」で、忘れもしないんだけど、帯には「続・激突/ハイウェイに激突する青春と銃撃戦」と書いてあった。

うにゅ?なんで”激突”の続編が、青春で銃撃戦なんやねん?」と思いつつも借りてかえったパッケージには「撃たれてもいい!明日に向って突っ走れ!テキサス=シュガーランドまで800キロ!」と書いてある。「なんじゃこりゃ?」私はいっそ返却しようとも思わないでもないほど、脱力した。いくら劇場映画デビュー作とは言え、なんちゅうB級感漂うパッケージなんじゃろかい。

ブラジャーも外して、パンツ一丁でケツをボリボリ掻きながらビール風飲料(当時未成年のため@一応の粉飾)を片手に見始めた映画は、B級なんてもんではなくて私の好きな映画ベスト10に入る作品となる。

確かに銃撃戦はあった。激突する車もあった。主人公は夫婦ではあったけど、青春でもあった。でもそこに現れる人々は、良くも悪しくも人間的で魅力に、そして悪意に、はたまた日常のちょっとした分岐点に満ち満ちている。

主役のコールディー・ホーンはデビュー2作目の「サボテンの花/1969年」でヒッピー世代の代表のような娘を演じる。そしてこの作品では、向こう見ずでタイミングに恵まれなくて、しかも社会的には落ちこぼれで、でも愛情に溢れる母親の役を演じる。余りにも魅力的に。

汚れきった顔で銃を構える彼女の前髪は、可愛いリボンのついたピンで止めてある。それは母にしては幼く、女にしてはチープで、少女にしては実用的すぎる。そんなキャラクターを作り上げたのは、やはりスピルバーグ監督で、評価の別れる映画の中でも、私はその繊細にして細かく構築され、しかもあざとくはないエッセンスを捜してしまう。

古い映画雑誌を読めば、この映画に対する封切り当時の日本の評論家からの評価は歴然としている。そして、後日書かれた評価は、手のひらを返したものが多くて、苦笑を誘うのだけれど、邦題は今でも「続・激突!カージャック」のままだ。きっとアクション映画を期待してレンタルした人は拍子抜けし、ヒューマンドラマを好む人は、偶然この作品を見つけても、題名を見てから手に取る事は希だと思う。

この作品の原題は「シュガーランド・エキスプレス」という。もういちどこんな映画を撮って欲しいという願いは、絶対叶いそうにはないんだけど。